RI-ONとの決戦を前に、ヒカルが仲間になった。
各自で器に欲しい分だけ盛っていく。 ちらりと見れば思った通り、隅っこに座ったままぼんやりと一人、どっか違う世界に行っちゃってるヒカル。 僕は内心愚痴を零しつつ、別の器にヒカルの分を取ろうとした。 「おう氷室!オメー。そんなトコにいても誰も飯運んでくんねーぞ?」 ここにいる全員の中で一番デカい器に、山盛りのシチューを盛ったロッカクがドッカリとヒカルの隣へ腰を下ろす。 「ホレ、欲しいだけ食え」 差し出された器とロッカクを、興味無さげに交互に見遣るヒカル。 あーあ、ヒカルはきっと無視しちゃうだろうから、ロッカク怒るだろうなあ・・・。 宥めに入るの面倒だな〜・・・と半ばうんざりしていた僕は。 「おう、ちゃんと肉も食えよ」 妙に機嫌のいいロッカクの言葉に、慌ててもう一度そちらを見た。 そこには。 ロッカクの手から差し出される肉の塊を、薄い唇で受け止めているヒカルの姿が・・・・っ! 「なっ?!」 余りの光景に固まってしまった僕の横で。 「あはは〜。なんか親鳥がヒナに餌あげてるみたいだね〜」 なんていう、タイヨウさんののほほんとした声が。 「ホレ、口開けろ」 ちょっとーーーっ!? しかもヒカルはなんで文句も言わずにロッカクの手からご飯食べてるわけさっっっ!?
信じられないっ!!!
「・・・す、純柴・・・?」 ・・・・・・・・・・・・。 「す、純柴?」 僕はふん、と鼻を鳴らして、おたまとヒカルのために用意した器を放り出した。
馬鹿馬鹿しい。 可哀想だと思って気を使ってやるんじゃなかったよ、全く。
僕は心の中で毒づきながら席に着くと、自分の分のシチューを掻き込む。 頭の中でずっと文句を並べ立てていたせいか、食べ終わったシチューがどんな味だったか覚えていなかった。
そろそろ夜も深くなる時間帯。 今思い付いた、というように手を打ったタイヨウさんの言葉に、僕はやれやれと肩を竦めた。 「取り合えず今夜は、誰かの部屋で一緒に寝てもらうしかないかなあ」 ・・・仕方ないなあ。 レイジ君は疲れてるだろうからゆっくり休ませてあげたいし、萩原君と橘君はヒカルと一緒じゃ嫌がるだろう。 そう思って、溜息を付きつつ名乗りを上げようとしたのだけれど。 「じゃあ氷室、今夜は俺の部屋に来い」 「ヒカル君、ロッカクと一緒でも良い?」 メグルさんの問い掛けにヒカルが答えるよりも早く、ロッカクがぐりぐりとヒカルの頭を撫でる。 「・・・ああ」 憮然としながらも頷くヒカル。 「ちょっと待ったーーーーーっ!!!」 僕は思わず手を挙げていた。 突然のことに目が点になった皆が、僕を見つめている。 ・・・・・・・・・・。 え、えーと。 僕はこほん、と一つ咳払いをして、真面目な顔を作って皆を見返す。 「ヒカルはまだ合流したばかりだから、ここのこととかもよくわからないでしょ?」 僕の言葉に頷くレイジ君達。 「だからその案内もしなきゃいけないし、そのついでに今夜のところは僕がヒカルを引き取った方がいいかな〜・・・とか」 思うんだけど、どうよ? ・・・というか、なんで僕はこんなに必死になってヒカルを引き取ろうとしてるんだろう・・・(汗) 冷静になると、ちょっと哀しくなるかも・・・。 しかしそんな僕の思考に、周りが気付くわけもなく。
「そっか〜。純柴って面倒見良いんだな〜」 なんとなく、自分が面倒みてやらなきゃ、って気になっちゃうんだよねえ。 そのことについては、半ば諦めてもいるんだけど。
僕は溜息を付きつつ、ヒカルへと手を伸ばした。 「この屋敷の中、見せてやりゃーいいんだろ?俺の部屋は屋敷の大体真ん中にあるからな。こっからなら歩きながら適当に教えてやれるし」 「んじゃ、行くぞ。氷室」
だからヒカルもあっさり頷くなーーーーっ!!!
って!腰!ヒカルの腰にロッカクの手が・・・・・・っ!?
セ、セクハラだよ!?それって!!!
ヒカル、なんで何も言わないのさっ・・・!? 「じゃあな」 寄り添うように奥へと消えていく二人に、元気良く手を振るレイジ君たち。 「純柴、お休み〜」 僕は半ば呆然とレイジ君や萩原君、雪野さんや橘くんたちを見送って。 「ロッカクってば、氷室君のこと気に入ったみたいだね」
いいじゃないか。 あの手間の掛かるヒカルを、物好きにもわざわざ自分から引き取ってくれるって言うんだから。 どうせ今夜一晩で懲りるに決まってるんだ。 そうに決まってるさ。 大体、今までにも親切面してヒカルに近付いた奴で長持ちした例なんてないんだから。 僕の考えを知ってか知らずか、タイヨウさんが僕の背をぽんと叩く。 くそ・・・。 「からかわないでよ、タイヨウさん」 全くもう・・・。 全然悪気のなさそうなタイヨウさんだけど、きっとこの人腹黒いよ・・・。 「そんなに心配なら、一郎君も一緒にロッカクの部屋に泊まったら?」 少しばかり心動かされながらも、そこまでする必要はないだろうと自分に言い聞かせる僕。 タイヨウさんの言葉を最後まで聞かず、僕は走り出した。
あ〜あ、きっと明日になったら『ヒカルの保護者』って不名誉なレッテル、貼られてるんだろうな。
そう、深く溜息を付いた僕だけど。
次の日僕に貼られていたレッテルは、保護者を飛び越えて「氷室(君)の旦那さん」なんてゆーそら怖ろしいものだった。
タイヨウさん・・・これからの夜道には気を付けたほうがいいよ?
CHATでお話ししてるときに出た「ロッカクってヒカルの保護者二号ですよね?」の一言により出来たお話です。 ホントは純柴VSロッカクになる予定だったんだけど・・・。 なんか対決すると純柴負けっばなしになりそうだよな〜と思ってたら、勝負前から負けっぱなし状態に(笑) そして初めてちゃんと(?)書いたタイヨウさん。この人こそどっかの獣神官なイメージかも。 |
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