その日、珍しくヒカルが学校へ出てきていた。 「お早う、ヒカル。学校で会うのは何日ぶりかな?」 僕は笑いながら、自分の席に座っているヒカルの横に立つ。 だって制服姿のヒカルもメチャ可愛いんだもんV 「・・・何をニヤけている」 あ〜、その嫌そ〜おな顔もすんごい可愛いV 思わず相好を崩すと、ヒカルに溜息を付かれてしまった。 どうやら最近の僕は、ヒカルを前にするといつも笑っているらしい。 あ、しまった。 あんな萩原の顔なんか思い出しても時間の無駄なのに。←酷。 しかも目の前には本物のヒカルがいるんだもん。 「ヒカル、今日は一日いるの?」 ああああ、頷く姿も可愛いなあ!!! 「じゃあ、お弁当一緒に食べよ!でもって学校終わったら一緒に帰ろV」 ウキウキと誘えば、ヒカルは暫く考え込んでいたけれど。 「・・・いいぞ。その代わり、そのまま家に来い」 あまりの衝撃に僕は仰け反った。
と、泊まっ!? 泊まっていけとっ!?
あの、あのあのあの『氷室ヒカル』が!
そ、それって・・・! それってつまりっっっっ!!!
「とうとう初夜っっっ!?」 力んで叫んだ僕に速攻突っ込んだヒカルが、嫌そうに顔を顰めた。 そんな僕を見上げ、ヒカルが深く息を付く。
目が合えばふっと俯いてしまうヒカルに、僕はどう声を掛ければいいのかわからなかった。 ヒカルが養子だと知ったのは、そう昔の事じゃない。 揃って貿易商をやっているヒカルの養い親は海外出張が多く、家に帰ってくることの方が稀で。 「・・・もしかして、それで朝から学校に?」 伺うように聞けば、黙って頷くヒカル。 うーん。 頼られてるようだし!!!←思い込み。 「いいよヒカル。ご両親がいる間、僕がずっと傍にいてあげる」 縋るように(あのヒカルが、だ!)僕を見上げてくる金色の瞳に、僕は力強く頷いた。
ああ・・・神様、ありがとう! ヒカルが・・・ヒカルが僕をこんなに必要としてくれる日がくるなんて・・・っ!!! 生きてて良かった・・・・(感涙)。
この分なら、本気で初夜も近いかもしれない!
僕は心の中で鼻息荒く拳を握り締めていた。
結局朝の言葉通り、ヒカルは最後まで学校にいて。 「純柴・・・」 妙に気弱なヒカルを(内心激しくニヤけながら)励ましつつ、僕はヒカルの手を握った。 ああああ〜!生きてて良かったああああっ!!!(壁連打)
ホントに生きてて良かったっっっ!!!
一人幸せを噛み締める僕の横では、やっと決心を固めたらしいヒカルがドアノブに手をかけていた。 あ、ヒカルでも一応帰宅の挨拶とかするんだ〜・・・と感心した僕は。 「おかえりなさい!ヒカルーーーーーっ!!!」 きゃーーーっ!と勢い良く走り寄ってきた大人達にビビって引いた。
・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・あ、あれ?
なんか想像してたご家庭と180度違うんですが・・・?(汗)
「ヒカルーーー!朝の寝起きも可愛かったけど夕方の気怠い感じも激可愛いーーーーっVVV」
鼻息荒くデジカメ振り回す親父。 ・・・つーか、一年分纏めて撮りまくるのか。
「す、純柴・・・」 思わず現実逃避に入りかけた僕を、大人達の腕の中から縋るようなヒカルが呼び戻した。 はっ!?
そ、そうだった! ヒカルは僕だけが頼りなんだ!!!
きゅぴん☆と復活した僕だけど。
なんでかヒカルを抱き締めたまま固まった大人たちに凝視されて、今度は途方に暮れる。 「あ、あの・・・お邪魔します。僕、ヒカル・・・君のクラスメイトで・・・」 あ、しまった。
仕方なく訂正しようか、と口を開きかけたのだけど。
「駄目だーーーーっ!ヒカルはまだ嫁にはやらんぞーーーーーっ!!!」
親父があばれだした(死)。
「まあ、パパったら。気が早いんだから(笑)」
尚も気炎を吐く親父と、それを宥めるお義母さん。
ああ。結婚を反対されるときの定番の展開だなあ・・・。
典型的な展開にちょっと悦に入っていた僕は、ヒカルにものすごい目で睨まれているのに気付いて、慌てた。 近い将来はそうなるんだからそんなに怒らなくても良いのに、と思うんだけど、今はそんなことを言える状況でもないし。 ぺこり、と頭を下げると、まあ!とお義母さんが目を輝かせた。 「ヒカルが家にお友達を連れてきたの、初めてねV」 きらきらきら☆と輝く目でがっしと僕の両手を掴んだお義母さんは、 「ヒカルの事、よろしくお願いします!」 頼もしくもそんなことを言ってくれた。 改めて言われなくても、僕としてはヒカルとよろしくする気、満々なんだけど。 折角だから、ここで良い印象つけとかないとね! 速攻突っ込んでくるヒカルと親父は、この際無視。 よっしゃ!お義母さんからの信頼ゲット!! これなら合鍵を貰える日も近いな!!(にやり☆) 不服そうに僕を見ている親父の方は、後々懐柔するとして。 ついでに泊まる予定なんだけどV 今は言わないでおこうっと。 「あ、作るの手伝います」 小さい頃のプリティヒカル話とかも聞けて、かなり有意義な時間だった。
この後、気付いたら一人で部屋に籠もってしまっていたヒカルに『天の岩戸』大作戦が行われたのは、後々の語り草になるかもしれない。
………えーと。 最近なんとなくヒカルの家庭は崩壊気味なイメージ着き始めてるんで、敢えてそれを壊す事にチャレンジ。 テーマは、ヒカルを溺愛する養親。 愛情注がれすぎて、他人と関わるのが億劫になってしまったヒカルです。←なんじゃそりゃ。 そして今、両親に引き続き純柴まで追加。 ………ヒカルの人嫌いは更に強くなりそうです(笑) |
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